合格通知が届いて、私はすぐに退職の話をした。
直属の上司が、いわゆるパワハラ気質の人だったので、正直かなり怖かった。
震えながら退職を伝えたのを覚えている。
すると、その上司は固まった。
顔色が変わり、指先まで震えていた。
今思えば、私が辞めるとは思っていなかったのかもしれない。
私はその人を刺激しないように、敵だと思われないように、毎日かなり気を遣って働いていた。
女性が多い職場だったこともあり、誰かに相談して話が広まるのも怖かった。
同情されても、それが本人に伝わるのが怖くて、職場では本音を言わなかった。
ずっと抱え込んでいた。
限界だった。
上司は「わかった」とだけ言い、その後、退職の話は部署の上層部へ伝わった。
翌日、局長に呼ばれた。
「辞めたいって、何かあったのか?」
そう聞かれたけれど、私は上司のことには一切触れなかった。
退職までの期間が怖かったからだ。
「資格を取って、自立したいと思ったんです」
そうだけ伝えた。
でも、局長は全部わかっていたんだと思う。
「今まで本当によく頑張ったな。辛かっただろう」
そう静かに言われて、私はその場で泣いてしまった。
後から知ったことだけれど、その上司は他部署からも何度も問題視されていて、上の立場の人から注意を受けることもあったらしい。
仕事はできる人だった。
頭の回転も速く、正論で詰めるタイプだった。
でも、一度敵だと思った相手にはかなり攻撃的になり、周囲も腫れ物に触るような空気になっていた。
退職の時、私はいろんな部署の人たちから送別会や贈り物をいただいた。
個人的に声をかけてくれる人もいた。
その時初めて、
「見てくれている人は見てくれていたんだな」
と思った。
そして退職の時、上司からこんなことを言われた。
「あなたは、ずっと自分のそばで働いてくれると思っていた」
理由はわからない。
今振り返ると、あの上司なりに私を気にかけていた部分もあったのかもしれない。
だからこそ余計に苦しかった。
もう少し違う関わり方ができなかったのかな、と今でも考えることがある。
私自身も、何とかうまくやろうともがいていた。
でも当時は、お互いに余裕がなかったのかもしれない。
でも私は、今でも当時の職場の夢を見ることがある。
それくらい、自分の中では苦しかった社会人生活だった。
でも、あの頃の「このままではダメだ」という感覚や、追い詰められるような毎日は、結果的に私を看護師への道へ押し出した。
あそこまで強く動けたのは、あの逆境があったからかもしれない。
そういう意味では、今は少しだけ感謝している。



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